ドーバーの絶壁

MUSICとLITRATURE

冷たい熱帯魚

園子温監督の『冷たい熱帯魚』(2010年公開)を観た。

テンポの良いサスペンス作品で、残酷なシーンや性描写が多く観る人を選ぶが、個人的にはかなり楽しめた。あらすじは以下。

あらすじ: 熱帯魚店を営んでいる社本(吹越満)と妻の関係はすでに冷え切っており、家庭は不協和音を奏でていた。ある日、彼は人当たりが良く面倒見のいい同業者の村田と知り合い、やがて親しく付き合うようになる。だが、実は村田こそが周りの人間の命を奪う連続殺人犯だと社本が気付いたときはすでに遅く、取り返しのつかない状況に陥っていた。

 (シネマトゥデイより)

 この映画、埼玉連続愛犬家殺人事件という実話の事件を元にしている。ペットショップの経営難に苦しんでいた夫妻が、繁殖ビジネスの共同出資者を募り、高額な種犬を売りつける。詐欺に気づいた出資者が金額の返金を求めるが、夫婦によって殺され、関係者も次々殺されていき計4人の犠牲者が出た。

 

この事件の恐ろしい点は、夫婦が殺した死体を解体し、肉と骨に分け、完全に証拠を隠蔽したことだ。夫はこの行為を「死体を透明にする」と語っており、作中でもこの言葉は何度も登場する。

 

冷たい熱帯魚』では、犬が熱帯魚に置き換えられているが、この設定は実に素晴らしいと思う。もし舞台が熱帯魚店では無く犬を扱うペットショップだったら、作中のような緊張感は生まれなかっただろうから。

 

音楽は原田智英さんで、子気味よく流れる和太鼓の使い方や、マーラー交響曲1番、3楽章の葬送歌が時折流され、物語の雰囲気を形作っている。

 

脚本は、もう少し短く出来たのではないか?とは思う。例えばラストシーンだが、あれは個人的にはいらないような・・・以前、同監督の『自殺サークル』を観たことがあるけれど、あの作品も最後は登場人物が”メッセージ”を投げかけていた。わざわざ言葉にせずに、映像に残る情緒の中にほんのりと匂わせておけばいいのになあ、と感じた。

 

まあいづれにしろ中々に刺激的なエンターテイメント作品であった。『愛のむきだし』も観てみようかいな。

 

 

冷たい熱帯魚 [DVD]

冷たい熱帯魚 [DVD]

 

 

 

自殺サークル [DVD]

自殺サークル [DVD]