ドーバーの絶壁

MUSICとLITRATURE

ラフォルジュルネ2014東京でラフマニノフとベートーヴェンを聴いた〜その2

仕事で、1979年の紅白歌合戦の音源を聴く機会があった。司会は山川静夫水前寺清子、最多出場は島倉千代子、初出場がサザン・オールスターズにさだまさし、選手宣誓に始まり、蛍の光で終わる、僕が未だ生まれていない頃の紅白。非常に活気に溢れている雰囲気が伝わってきた音源だった。現在は、それから35年経過した2014年なうであり、熱気はやや失せてしまったかもしれないけれど、音楽番組としてはとても面白く、興味深いものが僕にとっての紅白。ただ、”国民的番組”という感じはしないかもだなあ・・・

 

先日のゴールデンウィークに行われたラフォルジュルネは、国民的とは言い切れないけれど、大勢のファンによって支えられている”市民的イベント”だと思う。東京という土地柄も大きいが、ほとんどすべての公演が売り切れ、しかもAホール千秋楽は当日券完売(去年よりも早いペースだった)。第10回にして勢いは留まるところを知らない。是非これからも続いていって欲しい。

 

・・・という、締めくくりに似つかわしい文章を先に書いてしまったが、気を取り直して、ベートーヴェンの協奏曲を、ラフマニノフに続いてホールAで聴いた事について。

f:id:hiro_sound:20140507235339j:plainMarina Chiche

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、僕にとって幼少からとっつきにくい曲だった。チャイコフスキーは何と言ってもキャッチーで、大衆的な、まるでポップスのような明るい雰囲気に溢れている。ブラームスは硬派だけど、メロディーの美しさ、悲しさが凝縮されている。メンデルスゾーンに至っては、周りの学生が血眼になって弾いているので、否が応でも耳に入ってくる。ところがこの”楽聖”の描いた協奏曲は、ものすごく特別な地位を与えられているようで、何故だかこちらが怖じ気づいてしまう・・・

 

まずはそれらの神聖なイメージをすべて取り払って、改めて聴いてみると、なんと素晴らしい、天上の音楽なんだろう・・・という発見に心を打たれてしまう。

 

マリナ・シシュはフランス出身のヴァイオリニスト。美しい。音色は非常に澄み切っており、ふくよかとは正反対のイメージ。表現力が非常に豊かだと感じた。ポルタメントで味付けしてみたり、ノンビブラートを効果的に交えてきたり、フォルテではガラっと勢いのある表情に変化したり・・・とにかく右腕の弓の使い方がべらぼうに上手い。氷上を滑っていくようなボーイング、これはもう天才以外の何者でも無いんじゃないか、と一人で勝手に結論づけてしまおう。とりわけ、1楽章は大変素晴らしかった。(ところでこれまた僕の勝手なイメージなんだけれど、ヴァイオリニストの音色はボーイングはもちろんだけれど、左手の指の太さに大きく依存するんじゃないか、と思っている。視覚的なイメージが先行しているのかもしれないが、間接の太い無骨な指からは、豊穣で厚みのある音色が紡ぎだされるような・・・パールマンしかりオイストラフしかり・・・)

 

以上、2公演を聴いたのみの感想だが、現代の若手アーティストの最前線を聴け、それぞれの素晴らしい表現力を堪能させてもらったラフォルジュルネ、是非また来年も行きたいものです。

 

最後に一言ボヤキ。クレーメルアルゲリッチ聴きたかったぜ!!!